このたび弊社 錦明印刷株式会社はハイデルベルグ社製 SpeedMaster XL75 を導入し、今年5月より新生1号機として稼働を開始しました。4月27日には世界最大の印刷機メーカーの日本法人であるハイデルベルグ・ジャパン株式会社様と印刷インキの世界トップメーカーであるDICグラフィックス株式会社様の2社をお招きし、始動式を開催。本誌では、長年取り組み続けてきた水性ニスコーティングへのこだわりと始動式の模様をお伝えします。
強く、美しく40年間にわたるこだわり
新1号機はインラインコーティングユニット付の6色印刷機です。水性ニスコーティングは多色刷りや表面保護加工を必要とする文庫本カバーなどに最適で、従来のPP加工やUVニス加工に比べ、コストセーブが実現できるという利点があります。
水性ニスコーティングについて、弊社の塚田社長はその歴史を振り返ります。
「長年、出版印刷に携わる中で、カバー関係の品質要求度は非常に高いと感じています。色調を損なわず、様々な用紙に対応でき、流通過程で擦れてもインキが落ちず、さらに、紙の風合いを生かせる表面加工が必要とされます。私どもは独自にニスを開発し、そうしたお客様のニーズにお応えしてきました。その取り組みは、1980年代前半まで遡ります。当時、出版社に寄せられていた「文庫本を読んでいたら、表紙が擦れて手が真っ青に汚れてしまった」というクレーム。そこで、PP貼りではない、文庫本カバーに適した表面保護加工技術の開発に着手したのが始まりでした。」
創業100周年の年に その価値を再認識
開発にあたり、水性ニスコーティングの生産性(印刷と同時に行えるため、短納期に対応)やコスト、黄変性の少なさ、リサイクル面に優れた点に着目。実用化テストを重ね、80年代中頃からサービス提供を始めました。その後、1999年には、「ニスの美粧性」という新たな価値に着目し、ハイグロス、マット、エコノミーの3種類の水性ニスの提供をスタートしました。現在に至るまで、数多くの本やカタログの表紙や本文にご採用いただいております。今回の導入について、塚田社長はこう続けます。
「そして、2017年。創業100周年の年に、drupa2016の展示会場(ドイツ・デュッセルドルフ)で契約したこの機械が、各社のご協力をいただきまして、いよいよ始動することとなりました。約40年間にわたり先駆的に取り組んできた水性ニスコーティングですが、メーカーによれば、わが国では提供する印刷会社は非常に少ないとのことなので、その価値を再認識し、さらなる品質向上を目指してまいります。」
「使う人の視点に立って、もっと普及してほしい」
「Speed Master XL75 はコンパクトながら大型の最上位機種のスペックと同等で、弊社製品の中でも最も素晴らしい機械です。」と語ってくれたのは、ハイデルベルグ・ジャパンの阿倍野アカウントマネージャー様。「今回搭載されたGTTローラー(水性ニスの転写ローラー)は、他の方式に比べ材料を無駄にせず光沢が出せるため、環境にも配慮しているといえます。カバーの色が変わらないといった保存性の高さなどから、消費者にとって、水性コーティングはPP貼りよりも優れていると感じますが、技術的には難しいため、日本では取扱いできる会社が少ないのが現状です。使う人の視点に立って、もっと普及してほしいと思っています。」
DICインクの採用で印刷面での品質追求も
弊社ではハイデルベルグ社のアニカラーという印刷機が色校正機として稼働しています。アニカラーで使用しているDIC社のインクを、このたび新1号機にも採用しました。
DICグラフィックスの岡部部長様よりコメントを頂きました。「DICのカラーガイドは国内で90%以上普及しています。特色の基準として、クライアントと印刷会社との間でご活用頂いておりますが、様々な印刷機・用紙に対応したインクづくりに日進月歩、精進しております。
色校正機と実際の印刷機で同じインクを使用することで、実際の印刷で色ぶれが出にくくなりますから、安定した品質が期待できると思います。」